2019年9月30日(月)

<スポーツのまちづくり5>ターゲットは130万人の全市民 さいたまスポーツコミッションに必要なものは

池田純氏

 前回は、本場のツール・ド・フランスを視察してきた経験も踏まえ、イベントを運営する側が観客を楽しませる気持ちを持つ大切さを訴えた。それには組織に民間のマインドを導入し、定着させることが不可欠。さいたまスポーツコミッションも民間移行はしたが、さいたま市から出向してきている職員が多数。

 行政と民間ではイベントに対する着眼点、発想点が違う。行政がまず追求するのは「安心・安全」。当然だし、何ら非難することではないが、そこから「見に来る人に楽しんでもらおう」という発想が最優先になることはない。

 新しく何ができるかを考えるにしても、行政は現状からの積み上げ式で考える。現行の在り方を前提に、そこに今年から何が付け加えられるかという考え方だ。

 でも私は逆だと思う。フランスで本物のツール・ド・フランスを見た。その経験からこんなことをやれば、今より多くの人々に訴えかけるイベントにできるはず。実現できる、できないは別にして、あるべき理想像に向かって何ができるかを考える。その姿勢が挑戦ではないだろうか。

 今のさいたまクリテリウムには自転車レースファンの10万人は足を運んでくれる。でも市が税金を投入してきた以上、市民全体、130万人をターゲットにしたイベントにすべき。その前提で具体的に何をすればいいか、何ができるかを考えた方が、大会は発展すると思うからだ。

 私が28歳から取り組んできた企業再生とは、結局は組織づくり。大切なのは組織の文化であり、考え方だ。民間移行したさいたまスポーツコミッションも体裁だけでなく、きっちり民間マインドに基づいた組織になれるかどうか。そのために民間から人材を登用することも必要だと思う。

 人材はもちろん、働く人の意識も体制も変わっていかなければならない。私たちが取り組むべきはクリテリウムだけではない。スポーツを楽しむ施設としての新しいアリーナのこと、アリーナを活用するコンテンツも考えないと。

 とはいえ、さいたまスポーツコミッションと行政との連携が成就するかどうかが、クリテリウムを大きく進化させられるかにかかっているのも事実。

 イベントを運営するには警察など行政交渉も必要だし、行政による議会対応も求められる。もちろん安心・安全も大事で、行政の力を活用しなければうまくいかない部分も多い。そういう意味では「ハイブリッドの経営」を追求していこうと思っている。

■池田純(いけだ・じゅん)

 1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。

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