2019年8月5日(月)

<スポーツのまちづくり1>クリテリウム、どう有効活用するか 行政の資源を武器に、自転車文化もっと広く

池田純氏

 3月に一般社団法人さいたまスポーツコミッション(SSC)会長に就任した池田純氏。プロ野球横浜DeNAベイスターズの初代社長を務め、球団経営にらつ腕を振るったスポーツビジネスの専門家だ。SSCで埼玉県のさいたま市と連携し、スポーツのまちづくりに挑む池田氏が新天地に懸ける思いを語る。

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 さいたま市からは1年ほど前に会長就任を要請されたが、"武器"を持つことが大前提で引き受けた。

 スポーツを活用した地域活性化で成果を上げるには、武器を軸に市民を幸せにすることを多角的に進めなければならない。例えばクリテリウムは今年からSSCの主催になるが、この大会単独で大きな収益を上げるのは困難。私が来ただけで躍進するものではない。私は魔法使いじゃないので。

 大切なのは、6年続けていて税金も投入しているクリテリウムをどう有効活用するか。クリテリウムはツール・ド・フランスの名を冠しているから自転車ファンには価値があるが、市民にとっては街のあちこちにBМXや(自転車と同じ施設を使う)スケボーで遊べるパークがあり、子どもたちが自転車に親しみ気軽に遊べるなど、365日の自転車文化に発展して初めて価値が生まれる。大人になってロードレースをやったり、本物のツール・ド・フランスに出場する子が出てくる。そういう自転車の文化、街づくりに結び付けないと。

 行政が資源を投入して自転車パークやハードなどの武器をSSCが保有し"自転車事業"として収益を考えるのがSSCの健全経営にもつながる。そういった武器をSSCが幾つか持たないと経営にならない。武器が前提で私は会長を引き受けた。それは市や市長との約束でもある。

 クリテリウムを開催する意味をもっと広義のものにし、自転車文化が広まればクリテリウム自体の価値も高まる。何年か後には自転車文化全体にスポンサーが付く。行政も進化させた考え方にならなくては。今のやり方の延長線上に非連続の成長はない。だからSSCがそのための武器を持てるかどうかがキーになる。ベイスターズには横浜スタジアムとか幾つかの武器があった。SSCでも会長になる前に持たせてもらう予定だったが進まず、武器を持てるかどうかをこの目で確かめるためにも会長を引き受けた。

 一部では、私がすぐにベイスターズの時のような成果を出すことを期待されているかもしれない。でもそれは間違い。ベイスターズも5年かかっている。

 SSCという"行政が産み落とした会社"が日本全国のベンチマークになるか否かに面白みがある。行政が持つ資源はそれだけではお金にならないが、新たな設計図を書ける私たち民間思考にとっては武器になる。SSCと市は車の両輪なのだ。

 成功するかは武器次第。行政のスピード感もあり、先行きが見えるまで5〜10年はかかるだろう。壮大なトライアルだ。

■池田純(いけだ・じゅん)

 1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。

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