2019年4月25日(木)

驚きの「翔んで川越」ツアー 見たことのない光景、息飲む客 小江戸のバンクシー、謎の巨大ボウリングピン

田園地帯に直立する高さ約5メートルのボウリングピン。現代アートのようなシュールさを感じる=川越市古谷本郷
東武東上線新河岸駅近くのマルス
川越の観光スポット「時の鐘」と思わず間違えてしまう「平成の鐘」=川越市脇田新町
入倉工務店2階にあるポール・マッカートニーのポスターやサインが展示された部屋。ポールの来日公演はすべて行っているという入倉順也さん=川越市脇田新町
「平成の鐘」をつく石橋啓一郎さん

 これまで自分自身が取材した風変わりな建造物や店を巡るツアーを開催している埼玉県専門フリーライター「サイタマニア イシ★バシ」こと、石橋啓一郎さん(39)=川越市。今回の舞台は観光地・川越。蔵造りの町並みを歩くと思っていたが甘かった。

 目の前には見たことのない川越の光景が広がり、気分は「翔んで川越」。戸惑いつつ、ディープすぎるツアーに同行した。

■川越版バンクシー?

 春なのに真冬並みの気温、雪交じりの雨が降った4月中旬。東武東上線新河岸駅(川越市)に、男女9人のツアー参加者が集合した。8年前からツアーを開催する石橋さんは「今回で26回目を迎えました」と鼻息が荒い。

 案内されたのは同駅周辺にある町内会掲示板。「マルスです」。1月17日付本紙の「イシバシが行く」でも紹介した、「○」に「ス」と書いた落書きだ。川越地域に少なくとも60個が点在しているという。

 凍えるような雨の中、こんな落書きをいきなり見せられた参加者の反応が気になり、「大丈夫か?」と振り向いた。すると意外にも「私も見つけたい」「まさに川越のバンクシーですね」と、はしゃぎながらスマホで撮影中。

 お笑い芸人が言う「今日のお客さん優しいなあ」の気持ちになりかけたが、記者(45)が時代に追いついていないだけと思うことにした。

■なぜここにボウリングピン

 次に向かったのは、同市古谷本郷の畑。街なかから、打って変わって広々とした田園地帯。住宅街が山影のように遠くに霞む。そこに、高さ5メートルのボウリングピンがそびえ立っていた。

 40年以上前、そばに住む男性が3歳(当時)の長男が迷子にならないようにと、土木業者から譲り受けて設置したという。今ではすっかり地域のランドマークになっている。

 ここで昼どきになったのでロヂャース川越店(同市脇田新町)で金土日祝に販売されている「小江戸川越あんぱん」(税抜188円)を購入。カリッとしたパンの皮に、粒あん、サツマイモ、白玉の具と、甘さとコクを堪能できる一品だ。

■熱中する親子

 再び冷たい雨に震えながら歩くと、前方に見えるのは川越の人気スポット「時の鐘」…、ではなく「平成の鐘」。

 1998年に入倉工務店(同市脇田新町)の入倉束雄(そくお)会長が建設したもので、当時の川越市長、故舟橋功一氏が名前をつけた。時の鐘に敬意を表して、高さ約16メートルの本家より165センチ低く設計した。

 塔内部のエレベーターを使って、3階の鐘楼部分へ。重さ300キロの鐘を鳴らせば、「カーン」と心地よい音が響く。「つきたい人がいたら誰でも来れるよ」と入倉会長。毎年、大みそかには甘酒をふるまい、多くの人がここで除夜の鐘をつくという。

 さらに同工務店2階には、会長の長男で、ポール・マッカートニーの大ファンである入倉順也社長(54)が、収集したポスターやサインを楽しむためにパブ風に改装した部屋がある。80インチのスクリーンにはライブ映像が流れ、壁にTシャツなど数百点のグッズを展示。

 ベクトルは違えど、好きなものを極める親子の姿に胸が熱くなった。

 ツアーに初参加した鶴ケ島市の東條一矢さん(48)は「喜多院(川越を代表する寺)でも行くのかなと思っていたら、『まさか』の連続で、すごく面白かった」と話していた。

■謎の記号? マルスもいろいろ

 「神様が1個だけ願いを叶えてくれるならマルスを書いた人を知りたい」。ツアーの最中、主催者の石橋啓一郎さんは真剣な表情でつぶやいた。

 「マルス」とは土星のような輪を持つ「○」に「ス」と書いてある手の平サイズの落書き。石橋さんは約15年前、上福岡駅周辺で数個のマルスを発見したことをきっかけに「収集」を始めた。街中を歩いて情報を集め、発見した全60個をすべて写真で記録している。

 石橋さんによると、川越の中心部、東武東上線の新河岸駅、上福岡駅周辺のガードレールや設備類に書かれてあることが多い。3つ並んでいたり、下に土台があったりと数種類のパターンが存在。「書いた人も分からないし、増えているのか減っているのかも分からない。謎にひきつけられる」と話す。

 「イシ★バシツアー」の開催は不定期。定員5人程度で年3〜4回実施。桶川、所沢、朝霞編などがあり、石橋さんがフェイスブックでツアーを告知した時に申し込む。無料。問い合わせは、石橋さん(電話090・6504・3560)へ。

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