2018年9月7日(金)

<旅するスマホ27>乗り合いタクシーで500km 砂漠で触れた、人の温かみ 〜サハラ砂漠とマラケシュ〜

メルズーガのラクダたちが休む光景
乗合タクシーで同情した“砂漠の民”(左)と運転手

 埼玉県さいたま市のウェブ制作会社に勤務するヨウスケ(35)が、スマートフォンを頼りに、2カ月かけてユーラシア大陸を陸路で横断。徒歩で800kmの「スペインのサンティアゴ巡礼道フランス人の道」に挑戦し、最終目的地モロッコを目指します。ウェブディレクターならではの視点で、世界のIT状況や、現地の人々との交流をレポートしていきます。

<旅するスマホ26>絶景と称される青い街シャウエンと不安定なGPS 〜モロッコのタンジェからフェズ〜

 24日の朝8時。ホテルで手配して貰っていた乗り合いタクシーは、旧市街のホステルからすぐの大通りで待っていた。年季の入ったベンツのバン。最初に僕を乗せたあと、3か所で客を拾い、運転手の横と後部座席の2列目に2人、3列目に3人の客を乗せて迷宮都市フェズを後にした。目的地は500km先のサハラ砂漠の村メルズーガだ。

 「気に入った景色があったら言ってくれれば停まるよ」と若い気さくな運転手。助手席は、「私は砂漠の民、ベルベル人」と挨拶してくれたフェズに仕事を持つ50代男性。生粋の砂漠育ち、モロッコ育ちということの自負を感じる人だ。

 運転手の後ろが僕で、隣はなんとスペイン在住40年の日本人女性マリコさん。砂漠お目当てのひとり旅らしい。そして後ろの座席の3人は家族連れ。砂漠の村からフェズに出かけて戻る50代夫婦と20代の娘だった。

 マリコさんのスペイン語が運転手に通じたし、“砂漠の民”の彼は英語ができたので、和気あいあいの車内。1時間に1回のペースで休憩をとりながら、ときに150km/hを超える猛スピードの荒っぽい運転で走った。砂漠というより荒野だ。砂交じりの影響なのか、銀色の空に薄ぼけた太陽が輝いている。

 反対車線を無視して道路の真ん中をひた走る。たまに対向車が近づくと、運転手はヘッドライトで合図、すれ違う時には窓から腕を伸ばして何やらサインを送る。たぶん、所々に控えている速度取り締まりの警官の情報を交換していたんじゃないかと思う。

 だんだん砂漠らしい景色に変化し、気温は40度を超えて上昇を続けた。

 比較的手前の休憩所で、運転手がポリタンクに水をいっぱいにしてトランクに積んだのを見ていたが、ずっと先の休憩所で見知らぬ人に飲み水として分け与えていた。“砂漠の民”は、昼に休憩所で買ったピザ数切れをやはり見知らぬ人にあげていた。後部座席の家族連れは、持ってきた食べ物を僕にも分けてくれた。

 この分配する感じがそうなのか。厳しい風土で培われてきた「分ちあう文化」があると知識では知っていたが。

 旅ももう終わりという時に感じた温かい触れ合い。この乗り合いタクシーのことは忘れそうもない。メルズーガは、砂丘が始まるエッジ部分の村だった。それぞれが目的の場所で降り、最後の客となった僕が降りたのはラクダたちが休む光景の前に建つホテル。19時を回っていた。

 翌25日、陽が昇ると怖いぐらいに気温が上がってくる。気温計は45度だが、足元の砂は70度とか80度ぐらいじゃないか。サンダルの横から入る砂で火傷(やけど)してしまった。

 ホテルのチェックアウトが午前中なのに、砂漠ツアーの出発は気温が下がる19時過ぎ。いったいそれまでどう過ごしたら良いのか。灼熱の砂漠を散歩、というわけにもいかずにエアコンのないホテルのロビーで、iPadで漫画を読むなどして過ごした。

 砂漠ツアーの参加者は20人。ラクダに乗って1時間移動して先の砂の上に作られたテントに泊まった

 26日はマラケシュまでやはり500km、11時間のバス移動。今度は20人乗りのバンだが、地元の人と乗った昨日の小型車のような触れ合いはなかった。

 マラケシュ旧市街のエル・フナ広場がとても賑わっていた。大道芸人、演奏する人、ARの体験、ジュース販売。もちろん次から次へ声がかかる。人の密度と熱気がすごい。

 砂漠で良いホテルに泊まったので、4ユーロの安宿にチェックイン。この旅最後の宿になる。明日はカサブランカから飛行機に乗り、カイロ(エジプト)で乗り継いで日本へ向かう。

 今日で56日目だ。2ヶ月というのはとても良い期間だと思う。旅は驚きと出会いの連続だけど、旅そのものに慣れてきてしまっている感じもする。ちょうど良いタイミングでの帰国だ。

 帰ってからすぐ働くことになるが、そこにまったく抵抗は無いしフラットな気持ちで「さあまた働こう」と思えている。仕事は仕事で、複雑で悩ましくて、ときどき辛いが面白いものだ。

24日 16,124歩

25日  3,819歩

26日 10,558歩

《筆者プロフィール》
ヨウスケ(35)/さいたま市内にあるウェブ制作会社勤務のウェブディレクター。 
クライアント企業は県内都内の中小企業から上場企業までさまざま。企業担当者とデザイナー、エンジニアを繋いでウェブサイト開設までの全工程を進行するのがおもな仕事。既婚者。趣味は歩くこと。

= 埼玉新聞WEB版 =

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