2018年7月15日(日)

台風や豪雨で頻発、中小河川の氾濫察知 川越の企業、小型・低価格の水位計開発 観測点増やし、水害減災へ

河川脇に設置した危機管理型水位計。ケーブルを通じて左下の河川に水位センサーが延びる(同社提供)
同社開発の「危機管理型水位計」を手にする水沢弘道部長(左)と中村哲也グループリーダー=東京都豊島区の同社営業本部

 台風の大雨や局地的豪雨による河川氾濫の水害が全国各地で頻発している。特に1級河川に比べ、監視体制が遅れている中小河川の水害対策が課題となっている。国が対策の一つに掲げるのが、水位観測体制の整備だ。電設機材や化学品などを製造・販売する日油技研工業(川越市)は、自社技術を生かし、小型で低コストの危機管理型水位計を開発。河川面積日本一の「川の国・埼玉」から水害の減災を発信していこうとしている。

■新型の簡易水位計

 県でも昨年10月、台風21号による新河岸川に流れ込む江川流域都市下水路や雨などの内水で、川越市などの一部地域が浸水被害に遭った。行政の初動対応の遅れだけでなく、中小の河川に警戒や監視の体制が不十分な現実が浮き彫りになった。

 国土交通省は2016年11月に「革新的河川管理プロジェクト」を発足。中小河川でも水位を観測し、行政が避難勧告できる体制づくりの重要性を掲げ、民間企業に新タイプの水位計の開発を呼び掛け、普及や整備の取り組みを行っている。

 1級河川などにある既存の水位計は、平常時から河川管理に必要なデータを取得し、洪水時の対応にも活用する。その一方で設置と維持に膨大な費用がかかり、普及しない要因となっていた。

 同プロジェクトが目指すのは、洪水時の水位を中心に計測することを想定し、1台当たりの設置コストが100万円以下で、無給電で最低5年以上稼働するなどの条件を満たす危機管理型水位計だ。

■同社の特徴

 同社営業本部第1営業部の水沢弘道部長は「水位計の設置などがなく、避難が遅れて被害を受けるのは過疎地域が多い。数世帯しかないからと無頓着ではいられない。数百万円の水位計は無理でも、数十万円のものなら設置可能なはず」と、同プロジェクトで独自の新型水位計を提案した。

 同社は、海上の水質などを測定する監視装置や鉄塔などの故障の検知装置など、人が普段立ち入らない自然環境下で稼働する遠隔監視装置のノウハウを持つ。同社同部機器グループリーダーの中村哲也さんは「山と海の遠隔監視装置の実績を土台に小型で耐久性に優れた水位計を開発した。測定の間隔を変えるなどカスタマイズも可能」と話す。

 電源が取れない山間部の河川などに設置が想定されるが、ソーラーパネルで発電するので電気は不要。落雷に備えてバックアップ機能も備える。

 横約18センチ、縦約30センチ、奥行約9センチほどの遠隔監視装置の本体を河川脇の架台などに設置。本体からケーブルを通じて川底に延びる水位センサーが水圧から水位を変換。計測データは携帯電話と同じ通信会社の一般回線で送られた後、クラウドコンピュータで処理され、水防災情報サイト「河川情報センター」内で、誰でも閲覧できる仕組みだ。

■客観的な数値とデータ

 神奈川県の鳥山川で行われた実証実験でも、計測性能が確かめられ、今年から販売も開始。本体価格は約70万円台と大幅にコストダウン。中村さんは「本年度は200〜250台を目指したい」という。

 国交省は、20年までに全国5800カ所(約5千河川)に新型水位計を設置し、観測点を増やす計画だ。メーカーにとっては新たな市場獲得に期待が高まるところだが、中村さんはそれだけではないと厳しい表情を見せる。「田畑が心配で見に行った農家のおじさんが洪水に流されて亡くなる事故が必ずある。リアルタイムで水位や危険度が分かれば、こういう事故も減らせる。社会貢献の意味でも(販売)数を増やしたい」という。

 水沢さんも「これまでは避難すべきかどうかは人の感覚に頼る部分が大きかったが、客観的な数値とデータに基づいた判断が必要」と話している。

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