2018年3月9日(金)

<熊谷6人殺害>死刑判決に自然と涙 妻子奪われた男性が胸の内、謝罪なく「怒りと憎しみしかない」

殺害された妻の加藤美和子さん(中央)と長女美咲さん(右)、次女春花さん(左)の遺影を並べ記者会見する遺族の男性=9日午後、さいたま市浦和区

 事件についてほとんど語ることのなかった被告に下された判決は、最も重い刑だった。9日にさいたま地裁で開かれた、熊谷6人殺害事件の裁判員裁判の判決。ペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)は死刑を言い渡された瞬間、下を向いたまま、視線を上げようとせず、閉廷後もしばらく立ち上がらなかった。一方、事件の被害者遺族は「ほっとした」と安堵(あんど)。裁判長の判決文朗読に耳を傾けた。

 「自然と涙が込み上げてくる感じがした」。事件で妻の加藤美和子さん(41)と長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=年齢はいずれも当時=を奪われた男性(45)が閉廷後、報道陣の取材に応じ、死刑判決に対する胸の内を明かした。

 「極刑にしてもらいたい」。裁判が始まる前から、そう言い続けていた。その願いが届いた判決。「無事死刑判決が出たことに、ほっとしています。帰ったら妻や娘に報告したい」。会見の第一声は、安堵の言葉から始まった。

 この日の法廷で佐々木直人裁判長は、主文を後回しにしないで、冒頭に死刑を宣告。判決理由で、弁護側の主張をことごとく否定した。それを聞き、時折、ナカダ被告に視線を送るような様子も。「(死刑判決は)家族に対して最低限のことができた。安心というか、全身の力が抜ける感じ」。ナカダ被告は「謝罪も何もない。怒りと憎しみしかない」と話す。

 判決は「当然の結果だし、安心した」というものの、心の中の霧が晴れたわけではない。「なぜ家族が殺されなければならなかったのか」。その点は、最後まで明かされなかった。裁判では、被害者参加制度を利用。ナカダ被告に直接問い掛けたこともあった。それにナカダ被告は答えることはなく、いまだに分からないまま。「真実が聞きたかった。それだけが心残り」。悔しさをにじませる。

 事件後しばらくは自宅に戻れず、仕事を休むなど、事件を境に生活は一変した。「自分が前に進むため」。そんな思いで挑んだ裁判。この日の判決で「一歩踏み出した形にはなると思う」とは言うものの、「死刑が執行されて初めて一歩進める。生きていることが許せない」。厳しい処罰感情は残る。

 だが怒りだけではない。事件を通じて、多くのことを経験した。「事件に限らず、災害などで困った方々に手を差し伸べ、助けられるような活動もしていきたい」。前向きな思いも口にする。そのためにも「まずは自分の気持ちを前向きにしていきたい」。この日を一つの区切りにし、止まっていた時を動かしていく。

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