2017年11月27日(月)

アニメを活用、ユニークな久喜・鷲宮のまちおこし らき☆すた放映10年、地元への経済波及効果は31億円

ファンが奉納した、らき☆すたキャラクターを描いた絵馬=久喜市鷲宮の鷲宮神社
ファンからもらったグッズなどを店内のショーケースに飾っている島田吉則さん=久喜市鷲宮

 アニメ「らき☆すた」の舞台となり“オタク”を対象としたユニークなまちおこしで有名になった久喜市鷲宮地区。放映から10年が経過した現在も、街には大勢の若者が訪れる。

 アニメを活用した地域振興がブームになる中、鷲宮は変化の波にうまく乗りながら、トップランナーの地位を守ってきた。その根底には、作品とファンを第一に考える地元の変わらぬ姿勢がある。

■アニメと地域が共栄

 「祝アニメ10周年」「らき☆すたと鷲宮がこれからも輝きますように」―。同地区にある鷲宮神社の絵馬掛け所には、現在もファンが奉納したキャラクターの絵馬が所狭しと並ぶ。

 らき☆すたが放映されたのは2007年。以来、聖地巡礼と称して大勢のファンが訪れ、旧鷲宮商工会(現久喜市商工会鷲宮支所)を中心にまちおこしが始まった。出演声優を招き、関連グッズを販売。地元の夏祭り「土師祭」には、キャラクターを描いた「らき☆すた神輿(みこし)」も登場した。

 鷲宮神社の正月三が日の参拝客数はアニメ放映前の13万人から30万人に急増し、11年〜16年は47万人を記録。日本政策投資銀行の試算では、地元への経済波及効果は10年間で約31億円に上る。

 地元商店は数字に表れない効果を実感する。「自分がオタクだという事実に気付かされた」と笑うのは、和菓子店を営む島田吉則さん(51)。

 ファンに勧められて週10本のアニメを見るようになり、店内にはプレゼントされたグッズがずらり。「出会うはずのなかった人々と知り合えたのが一番の喜び。らき☆すたが結んでくれた縁に感謝です」

■飽きさせない

 訪れるファンは深夜アニメをよく見る30、40代の男性が中心で、オタクを快く迎える街に感激し、リピーターになった。しかし最近は20代の若者の姿も目立つという。

 「動画サイトでらき☆すたの再放送を見て訪れる若者が増えている」。ファンが集う鷲宮駅前の名物スナック「記念日」のマスター森田一男さん(41)は視聴環境の変化を挙げる。

 以前はオタクであることを隠し、ひっそり巡礼するファンも多かったが、「オタクを見る社会の目が変わり、ファン同士で誘い合いやすい雰囲気になった」とも。

 一方、まちおこし自体はオタクを対象とした婚活や映画製作、インターネットラジオの放送など流行を取り入れていった。らき☆すた離れが進んでいるように見えるが、当初から携わる同支所の松本真治さん(40)は「ファンを飽きさせないよう工夫した結果で中心はらき☆すた」と断言する。

 人事異動などで運営組織が変わっても、方針を維持できるよう今年8月には島田さんら地元商店やファン、専門家など約20人でつくるプロジェクトチームも発足した。

■草の根で発信

 アニメツーリズムを研究する北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑教授によると、アニメ舞台地の来訪者は作品を愛する少数のコアなファンと、カジュアルな感覚で楽しむ多数のファンに分類される。

 鷲宮のまちおこしは「作品を核にファンや地元、制作者が垣根を超えて交流しているのが特徴」といい、その過程で「コアなファンの心をつかんだのが成功の要因」と分析する。

 アニメは日本を代表するコンテンツ産業と位置付けられ、制作本数は右肩上がり。日本動画協会のレポートによると、15年に放映されたテレビアニメは341本。うち新作は233本。新しい聖地が次々誕生する中、鷲宮がまちおこしを継続させていくためには何が必要なのか。

 山村教授は「コアなファンと協力して作品の魅力を発信していくこと」を挙げ、「カジュアルなファンも取り込みながら、ほかの聖地とも交流を深めていく。そうした草の根のつながりが、今後10年の課題ではないか」と話した。

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