2017年3月12日(日)

「お荷物は嫌」四肢まひの男性、口で絵描く 商品にする絵の提供も

口で筆を執る梅宮俊明さん=越谷市内

 事故によって手の自由を失った男性が、口を使って絵を描き続けている。越谷市の梅宮俊明さん(50)は「自分が生きた証しを残したい」と、これまでに100点以上の作品を手がけた。事故後は何度も「死にたい」と考えた梅宮さんだが、今では県内外で展示会や講演を行い、「社会に貢献したい」と前向きに話している。

 梅宮さんは19歳の時に交通事故でけい椎を損傷して四肢まひとなった。首から下の感覚を失い、車いす生活を余儀なくされた。1年間もの入院生活と5年間にわたるリハビリ。「何度も『死にたい』と考えた」と、つらい日々を振り返る。

 その後、社会とのつながりを求めて障害者スポーツを始めたが、「周りと比べて自分にはできないことばかり」と、耐えられずにすぐやめてしまった。事故から10年たったある日、友人から「絵を見に来ないか」と誘われた。それが梅宮さんと絵の出合いだった。

 学校の写生会ぐらいでしか絵を描いたことはなかったという梅宮さん。「初めは絶対無理だと思った」。しかし周囲の協力や、口で描く画家に出会ったことで「これなら自分にもできるかも」と月に2回、絵画教室に通い始めた。

 口で絵を描き始めて18年。作業療法士が作ってくれるプラスチック製の筆の「取っ手」をくわえて筆を動かす。慣れるまでの1年間は口や首を痛めた。今でも毎日描くのは体力的にも厳しく、一つの作品に最低でも3カ月以上かかる。

 「見た人が和んだり明るい気持ちになってほしい」。梅宮さんの作品は、風景画や人物画などモチーフはさまざま。どれも優しいタッチで、色鮮やかだ。「今度は2020年の東京五輪に向けて、水泳などスポーツの絵も描きたい」と話す。

 8年前からは「口と足で描く芸術家協会」の奨学金給付生となり、ポストカードなどの商品に使用する絵を提供している。2011年にはさいたま市内で初の個展を開催。数々のグループ展に参加するほか、学校などさまざまな場所での講演活動も行っている。「お荷物になって死んでいくのは嫌だ。支えてくれる家族や友人に恩返ししたい」。そんな思いを胸に、梅宮さんは筆を執り続けている。

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