2015年5月25日(月)

<川崎火災>狭い居室密集 無料低額宿泊所、県内入所者も不安

生活保護費約13万円のうち、家賃や食費名目で7割以上を天引きされる。男性は「早くここから出たい」と嘆く=県南部

 川崎市川崎区の簡易宿泊所2棟が全焼して9人が遺体で発見された火災は、狭い居室が密集する宿泊施設の安全対策のぜい弱さを露呈した。

 埼玉県内には生活困窮者に一時的な寝床を提供する無料低額宿泊所が少なくとも50施設以上ある。行政のチェック機能は不十分で、防火対策に課題が残る。

 県南部の無料低額宿泊所で生活する60代男性は「火災が起きたらみんな死んでしまう」と不安を募らせている。

■高齢者ばかり

 無料低額宿泊所は貧困層の拡大に伴い住まいを失った生活困窮者の「受け皿」となっている。入所者は生活保護を受給する高齢者が大半を占める。生活困窮者を囲い込み、家賃や食費名目で生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」をする業者もある。

 60代男性は、2008年から県南部の無料低額宿泊所で暮らす。50代半ばに脳梗塞を患い、仕事ができなくなった。頼った場所が、行政から紹介された同宿泊所だった。

 宿泊所は4階建ての集合住宅。1階は共同の食堂や風呂場があり、2〜4階は入所者の部屋が並ぶ。4畳半のスペースを3人で共有している。

 部屋はベニヤ板で仕切られているため、窓は開けられない。男性は危機管理がぜい弱な宿泊所について「高齢者ばかりで足腰が悪い人も多い。私も右半身がまひしていて、階段まで移動するのも一苦労。火災が起きたら皆殺し状態になる」と嘆いた。

■「どんどん改造」

 県が13年に策定した「被保護者等住居・生活サービス提供事業の業務の適正化等に関する条例」では、無料低額宿泊所を一時的な利用と定めるほか、避難通路や消火器などの防火整備、避難訓練の実施などを義務付けている。

 しかし無料低額宿泊所を規制する条例の効力は弱く、消防法や建築基準法に違反している業者も見受けられる。

 生活困窮者を支援する小林哲彦弁護士は「宿泊所の内部はどんどん改造されている。安全面は最悪だが、行政のチェック体制は機能していない。貧困が拡大する中で、行政が悪質な施設の運営業者を必要悪として見過ごしている実態は否めない」と強調する。

 川崎市の火災では、宿泊所が必要な防火対策を怠ったまま、2階建てから3階建てに改築した疑いが浮上した。

 「ここ(無料低額宿泊所)にいるのは行き場を失った人ばかり。出るに出られない」。60代男性は安全対策の徹底を強く求める。

 小林弁護士は「悪質な業者を放っておけば、多くの人が犠牲になる」と警鐘を鳴らし、「県は無料低額宿泊所に対する本格的な調査に乗り出し、指導を徹底するべきだ」と訴えた。

■無料低額宿泊所と簡易宿泊所

 無料低額宿泊所は、社会福祉法に基づく社会福祉事業で、生活困窮者らの自立支援などを目的に無料または低額で提供される宿泊施設。一部の施設で、利用者の生活保護費を不当に徴収していることが発覚するなど、貧困ビジネスとして問題視されている。

 一方、簡易宿泊所は、旅館業法で「宿泊する場所を多数人で使う構造、設備を主とする有料施設」と規定される。ホテルや旅館より設備が簡素で宿泊代が安いのが特徴。カプセルホテルなども該当する。

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