2015年4月14日(火)

土井杏南(大東大)、勝負の年へ 埼玉女子陸上界の至宝が復帰

復帰レースを終え、笑顔を見せる土井杏南=12日、上尾運動公園陸上競技場

 埼玉女子陸上界の宝がスタートラインに帰ってきた。土井杏南(埼玉栄高出、大東大)が12日、上尾運動公園陸上競技場で行われた春季記録会兼国体県予選100メートルに出場し、昨年7月の世界ジュニア選手権以来、約9カ月ぶりのレース復帰を果たした。

 同8月に負った全治2カ月の大けがを乗り越え、たくましさを増した19歳。走ることのできる喜びと悔しさを活力に過ごした鍛錬の日々を、大学2シーズン目となる勝負の年へ、ぶつける決意だ。

■走れる喜び力に変え

 ポニーテールをなびかせ、復帰戦を走り終えた土井の表情は実に晴れやかに映った。課題はいくつか挙げながらも「『やっぱり走れるって楽しいな』って思いました」。

 昨年8月23日、自身19度目の誕生日を迎える前日の出来事だ。場所は今回、再一歩を踏み出した舞台と同じ上尾運動公園陸上競技場。長崎国体に向け、リレーの練習に励んでいる時だった。

 2走の土井が、3走の選手へのバトンリレーの際、タイミングが合わなかった。無理して渡そうとした瞬間に、「筋肉が動いたのが分かった。『やっちゃったな』と思った。自分の判断ミスでした」。診断の結果は左太もも裏の肉離れで全治2カ月。人生初の松葉づえ生活も経験した。

 これからという時に襲った悲劇。既に内定し、約1カ月後に迫っていたアジア大会も辞退せざるを得なかった。

 目標に掲げていたレース。大学生となり、佐藤真太郎コーチ(松山高出)と二人三脚で積み上げてきたトレーニングが徐々に実を結び、新たな自信も芽生えてきていただけに「どん底からのスタートでした」と、さすがに落胆の色は濃かった。アジア大会のテレビ番組のテーマ曲、サザンオールスターズの「東京VICTORY」を耳にする度に「聞きたくなかった」。

 とは言っても、このまま立ち止まっているわけにはいかない。切り替えの早さも長所のひとつ。悔しさはリハビリと冬季練習にぶつけた。と同時に「今までいろいろな人が支えてくださって、そういう重みをもっと実感できました」。あらためて湧き立った感謝の気持ち。もともと駆けっこが大好きで始めた陸上への思いもさらに深まった。

 けがをしてから約8カ月。“リラックス走法”を身に付けるために300メートルに取り組んだりと、新たなメニューも積極的に取り入れた。この8カ月が決して無駄ではなかったと、進化した走りで証明していくつもりだ。

 今季の大目標は8月下旬に中国・北京で開催される世界選手権に、リレーだけではなく100、200メートルの個人種目でも出場し勝負すること。そこに向けて18、19日の織田記念から本格的な挑戦がスタートする。

 来年にはリオ五輪も控え、「今年で全てが決まるわけじゃないけど、一番肝心な年で勝負の年。しっかりと捉えて頑張りたい。最高の年にしたいです」とにっこり。土井にはやっぱり、笑顔がよく似合う。

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