気づきから支援へ 軽度発達障害考

「文字が読めない」

LD(学習障害)〔1〕


LD当事者の南雲明彦さん=都内港区の西麻布児童館

 「ぼくの手を見てください」―。初対面の時、南雲明彦さんはいきなり両手を目の前に突き出した。大きな瞳、さわやかないでたち、明るい笑顔とは裏腹に、その手は二十二歳とは思えないほど荒れていた。

 強迫神経症で一日に何度も手を洗うようになったのは高校三年の五月。高校一年まで「ごまかしながら」なんとかついていけた勉強が二年生で行き詰まり、焦りから不登校、ひきこもりに。

 文字がにじんで教科書が読めない、小さなマスに字を書くことができない、漢字を書くと偏とつくりが逆になる。行き詰まった原因はディスレクシア(読み書き困難)。典型的な学習障害(LD)の症状だった。

 小学生時代から既に困難は感じていたが、単に活字が嫌いなだけと思っていた。親も教師もLDとは気が付かなかった。

 南雲さんは小さいながらも工夫した。教科書を読むことや、黒板を写すことはあきらめ、教師の話を懸命に聞き、耳で覚える。家に帰れば学校の出来事を両親に話しながら復習する。聡明(そうめい)な少年は中学時代も切り抜け、県立の進学校に進んだ。

 だが、高校二年生になると周囲は受験モード。ただでさえレベルが高いうえ授業のスピードも速くなり、独自の学習法は通用しなくなった。

 「いくら努力してもノートがとれないし、漢字は間違える。なぜ、自分だけできないのか」。自信を失い不登校に。明るくまじめで、学校が大好きな青年は、それゆえ追い込まれた。

 「文字が読めない、文字が読めない、なんでおれは文字が読めないんだ」。本人に記憶はないが、何度も叫んだのを両親は覚えている。

 LDを一次障害とするなら、一次障害から不眠や神経症などさまざまな症状を来したり、不登校や非行になることを二次障害と呼ぶ。

 障害の程度はさまざまで、誰もが自信をなくしたり、二次障害になるわけではない。たとえ一次障害が重くても適切な支援があれば二次障害は防げる。だが、多くの当事者がこれまで周囲から気付かれることなく、原因も分からず苦しんできた。


 軽度発達障害 LD、ADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症など最近注目されてきた障害の総称。LDは学習、ADHDは行動、高機能自閉症はコミュニケーションの障害といわれる。
 知的障害を伴わないため「軽度」と呼ばれるが、当事者や親、教師の苦労は決して軽くなく、発達障害と表記することもある。

(2007年2月7日掲載)

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