見えない貧困 埼玉発 崩れる暮らしと仕事
ネットカフェ難民〔4〕
抜け出す人わずか
「切り捨てていいのか」
 
福祉事務所での生活保護申請。「布団の購入代は? 借りるアパートの家賃は?」など細かいやりとりが続いた

 佐藤伸一さん(44)=仮名=の生活に変化の兆しが見えたのは昨年初め。ネットカフェで何気なくパソコンをいじっていた時だ。検索サイトに入って「ホームレス」「生活保護」とキーワードを打ち込んでみた。

 そこでさいたま市内で活動するホームレス支援のNPO法人のホームページを見つけた。「相談だけでなく、実質的な問題解消に寄与することを目的に活動している」と説明されていた。

 「最初に見た時は、そんなにうまくいくかよと思った。でも年も年で疲れもある。住む所がほしいと思うようになった」。昨年五月にNPOにメールを送った。

 数日後に職員と面談。さらに数日後には、寝泊まりすることが多かった県東部の市役所に出向き、生活保護を申請した。

 二週間ほどして生活保護の支給が認められ、アパートを借りる費用として佐藤さんは約十一万円を手にした。その日暮らしで財布の中のお札は五千円札がせいぜいだっただけに、「万券(一万円札)なんて何年ぶりかな」とおどける。

 不動産屋に行き、部屋を借りる契約をした。四畳半、シャワー共同で家賃は二万五千円。すぐに生活保護を打ち切って自分の収入で暮らせるよう、できるだけ安い部屋を探した。

 周りに人がいない場所で寝るのは十年ぶり。「何時に帰っても、どんな格好をしていても、大の字で寝てもいい。普通の人には部屋のありがたさは分からないでしょうね」。小さな暖房器具を買っただけで、家具はほとんどない。

 ネットカフェで、健康ランドで、公園で、自分と同様に帰る家を持たない人たちを見てきた。十年間の“難民”生活で実感してきたのは、同じ境遇にある人がどんどん増えていること。生活を立て直すきっかけをつかめるのは、ほんの一握りの人にすぎない。

 「完全にホームレスにならず、ぎりぎりのところであがいてきたから抜け出すことができたのかもしれない。こういう生活になってしまったのは自分の責任もある。でも、だからといって切り捨ててしまっていいのか。もっと助ける仕組みがあってもいいのでは」。佐藤さんはそう感じている。

(2008.1.10付掲載)

 

 

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