見えない貧困 埼玉発 崩れる暮らしと仕事
ネットカフェ難民〔3〕
膨らむ不安と焦り
「寝る場所は…食べるものは…」
 
電話をかける。派遣会社に明日の仕事の有無を確認する

 派遣先の倉庫での仕事を終えた午後六時。佐藤伸一さん(44)=仮名=は、足早に駅に向かいながら携帯電話を手に取る。明日の仕事の有無を派遣会社に確認するためだ。

 登録しているのは五社。一社目に電話。仕事はない。二社目も駄目。「だんだんと焦ってくる。お金がなくなったらどうしよう…。寝る所は…、食べる物は…。頭の中で不安がどんどん膨らむ」。仕事が見つからないときも多い。働けるのは週に平均四日ほどだ。

 住所がない生活では、できないことが多い。銀行口座をつくれない。健康保険に入れない。電話の契約もその一つ。携帯電話は友人の名義の物を借りている。仕事を得るための必需品である携帯電話は、佐藤さんの生活を支える細い命綱だ。

 「丸一日の仕事があるときはラッキー。半日だけのときもある。こちらから仕事を選ぶことはできない」

 仕事のある、なしは派遣先の会社の都合次第。多くが倉庫内の仕分けなど体を使う仕事だ。時給は八百円。現場までの交通費が支給されたとしても、一日働いて六千円ほど。月収に換算するとせいぜい八万円だ。

 仕事を終えると、コインロッカーに荷物を取りに行く。手提げバッグ一つ。夏ならジーンズ一本、Tシャツ数枚。シーズンごとに服は捨てる。ぜいたく品や電化製品はまったくない。

 本屋で立ち読みし、ゲームセンターでぶらぶらして時間をつぶしてから深夜にネットカフェに入る。中にいられるのは長くて七時間だが、居続けるだけの所持金はない。

 食事はコンビニ弁当が多い。夜はファストフードや牛丼店。日払いで受け取る給料は宿泊費や食費で消える。楽しみは健康ランドに行くこと。バスに乗って料金が安い所に入る。仮眠用の小さなベッドだが、横になって眠ることが佐藤さんにとってのぜいたくだ。

 「今の生活はお金をためる必要がないので意外と快適。自由といえば自由だし。まあ代償は大きいですけど…」

 住む家がなくなってから十年。毎日夕方になると「明日の仕事はあるかな」、夜には「ネットカフェで寝る席があるかな」、千円のジャンパーを買うときには「この千円を使って大丈夫かな」。いつでも、どこでも不安に追い掛けられてきた。

(2008.1.9付掲載)

 

 

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