|
見えない貧困 埼玉発 崩れる暮らしと仕事
|
||
|
ネットカフェ難民〔1〕
幅80センチの“すみか” 薄い壁いつも物音 |
||
「ドン、ドン、ドン、ドン」。にぎやかな足音で薄いプラスチックの間仕切りが揺れた。午前三時三十分。女性二人の足音が遠ざかると、ドアが勢いよく閉まった。 さいたま市内のあるインターネットカフェは三フロアを使った大型店。料金は一時間三百十五円で、五時間利用できる割安な「ナイトパック」は千二百円。平日にもかかわらず百八十席の六割が埋まっている。女性店員は「毎日このぐらいは入ってます。お気に入りの席がある人も多いですよ」と話す。 店内は高さ百八十センチの間仕切りで細かく仕切られている。一人用のブースは幅八十センチ、奥行き百五十センチ。テレビとパソコン、合皮のリクライニング・チェアと足置きで中は埋まっている。いすの背もたれが壁に当たるため、リクライニングの角度は四五度で精い っぱい。一度、腰を下ろすとなかなか身動きできない。 むき出しの天井に付けられた空調機器から「ザー」という音が吐き出される。キーボードをたたく音。せき、くしゃみ、しゃっくり、いびき。カップめんをすする音もする。 ブースの外には漫画が詰まった本棚がある。無料のジュースやコーヒーはセルフサービス。漫画や飲み物を求めて、細い通路を絶えず人が行き交う。 ◆ 午前零時を回り、派遣社員の佐藤伸一さん(44)=仮名=は、いつものネットカフェにやって来た。案内されたブースにバッグを 置き、中からタオル、シャンプー、せっけんを取り出すと、店内に一つだけのシャワー室に足早に向かった。 シャワーを終えても着ている服は同じ。自分のブースに戻ると、タオルをハンガーに干して、いすに身を沈めた。無料で借りた薄い毛布を掛けると、すぐに寝息を立て始めた。 「最初のうちは眠れなかった。耳栓をしたり、アイマスクをしたり。今ではそんな物がなくても、いすに座ったらすぐにぐっすり」 足音やドアが閉まる音で時折、目が覚める。「何も考えない。とにかく早く眠りたい」。凝り固まった体をもぞもぞ動かし、すぐに目を閉じる。 午前六時を過ぎると多くの人が身支度を始め、店内はざわつきだした。佐藤さんはいすの上で体を起こすと、たばこに火を付けた。目をこすりながら一服してブースの外へ。無料のコーヒーを飲んでから、洗顔と歯磨き。バッグ一つを手にネットカフェを出た。 向かったのはコンビニ。立ち読みして時間をつぶす。朝食のパンと昼食の弁当、飲み物を買い込んで店を出た。きょうの仕事は午前九時から、倉庫の整理作業だ。短い睡眠時間にも「もう慣れた。疲れたとか、休みたいとか言っていられない」。数駅離れた会社に行くため、駅に向かって歩き始めた。 (2008.1.7付掲載) |
||
|
|
||
| ニュースの詳細は埼玉新聞でどうぞ。 購読申し込みは0120-633-888またはこちら。 saitama-np.co.jpの記事・写真の無断転載を禁じます。 日本の著作権法並びに 国際条約により保護されています。 Copyright 2008 The Saitama Shimbun |
||