埼玉新聞連載<経済>
− 起業人 −
流通革命−「1.5代目」の挑戦
「個店経営」の食品スーパー ヤオコー 川野幸夫社長
川野幸夫氏(かわの・ゆきお)
1942年埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業。69年1月八百幸商店入社。74年3月ヤオコーに改組、取締役、85年1月代表取締役社長に就任。95年ワイシーシー、日本アポック設立、現在ワイシーシー会長、日本アポック取締役。

 「本格競争はこれからだ」。埼玉県内中心に食品スーパーをチェーン展開している東京証券取引所一部上場企業、ヤオコー社長の川野幸夫は新たな流通革命を予想する。

 ヤオコーは一九五七年七月、比企郡小川町に八百幸商店としてスタートした。一九五八年に川野の母(ヤオコー会長)がセルフサービス方式の販売形態を導入、スーパーマーケット化に移行した。スーパーマーケットという業態を始めたのはダイエーが一九五七年、イトーヨーカ堂が一九五九年といわれており、ヤオコーは全国でも早いスーパーマーケット業態への取り組みであり、同分野の草分けでもある。

◇母の決断

 当時、八百幸商店は食料品の小売と卸をし、繁盛していた地域一番店だった。川野の母は繁盛していた商売をやめて、アメリカから学んだセルフ販売方式のスーパーマーケットという新たな商売を始めることを決断し実行した。川野の決断力、行動力は母から受け継いでいるものも多い。

 川野は自らを一・五代目という。そこには、(母が始めた)スーパーマーケットをさらに進化させてきた川野の姿がある。川野は一九六九年に八百幸商店入社後、七二年四月比企郡小川町に事実上の店舗展開、チェーン化に向けた一号店を立ち上げた。「店のことしか頭になかった」と仕事に没頭した。川野は現在のチェーン化、そして、近隣型商業集積ショッピングセンターであるNSC店舗の基礎を築いた。ヤオコーは「ミールソリューション=食のすべてを解決」する店となることを打ち出し、各店に主体性を持たせる個店経営を実践することを決めた。現在のヤオコーの姿を確立した。「母はすべてをまかせてくれた」。

 川野は商売に関心はあまりなかった。「社会派弁護士になりたい」と弁護士を目指して、一九六二年に東京大学法学部に入学する。ただ、川野は(川野の)将来について何もいわなかった母の手助けをしたいといつも思っていた。川野が入学した一九六二年、当時東大教授だった林周二氏の「流通革命」が出版。「流通革命」は当時の業界にある種の衝撃を与えた。「流通革命」を読んだ川野にとっても、流通、小売に対するそれまでの自身の考え、思いを変えるものとなった。川野は「(小売を)一生をかける仕事だと思った」。東大を卒業後、一九六八年に食品スーパーマルエツに入社。マルエツに入社し一年後に同社を退社、八百幸商店に入る。

◇15期増収増益

 ヤオコーは十五期連続で増収増益を果たし、好業績をあげている。今期(二○○五年三月期)も前期をさらに上回り十六期連続の増収増益となる見通しだ。この十五年は一九八○年代後半の景気拡大期から一転、九○年以降の景気後退期にあたる。「バブル景気」「バブル崩壊」といった言葉も生まれた。この間は、長崎屋、そごう、マイカルなど大手スーパー、百貨店が経営破綻した時代でもある。ヤオコーは厳しい時代に利益を拡大してきた。そこには、川野の明確な経営ビジョンとそれに基づく実践があった。

 川野は景気が悪いから業績が悪いと考えるか、自分たちの実力不足の結果と考えるかで明暗が分かれた、という。川野は実力不足ととらえ、商売のあり方を考えた。一九九四年第一次経営ビジョンを策定、商売のあり方を明確にした。それは「食のすべてを解決する」というものだった。ヤオコーには素材、鮮度、メニュー、調理などさまざまな提案がある。店に主体性を持たせる「個店経営」を推進。社員、働く人、一人ひとりが主体となることでもある。

◇まだ草野球

 「日本の流通業は規制に守られてきた。まだまだ草野球。消費者は草野球には満足しない」。日本の流通業は大型店の出店、営業などを規制した大規模小売店舗法のもとで発展してきた。しかし、大規模小売店舗法は二○○○年六月に廃止。日本型が崩れ、完全な自由競争時代が始まった。一方で、日本経済は「生産者主体」から「消費者主体」に変わった。流通の世界も例外ではない。国内流通業にも、地殻変動が起きている。食品スーパーには総合商社が参入、企業再編の動きもある。最も大きな市場である首都圏で、独自の経営で成功しているヤオコーの存在は大きい。

 ヤオコーには五百店舗、売上高一兆円構想がある。「十五年程度で達成できる」。三十日、鶴ケ島市の東武東上線若葉駅前に、ヤオコーが開発、建設、運営、管理の大型ショッピングセンターがオープン。食だけでない新たな提案をする。川野の挑戦は続く。

 「おかげさまでと思い生きている」。川野の生活信条だ。

(敬称略)

 

ヤオコー
▽本社=川越市脇田本町1−5▽事業内容=食品スーパーをチェーン展開現在75店舗▽資本金=41億9900万円▽売上高=1518億円▽経常利益=56億円(2004年3月期連結)▽社員=4100人。
(2004年6月30日掲載)

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