親たちは動き始めた・ひきこもり第1部

2.何が起きているか


 ■今年こそは

 「正月になると、今年こそは、といつも思う。今年こそは息子が変わってくれると」。県南部に住む川田裕子さん(59)=仮名=は長男(32)が二十歳を過ぎてからひきこもりを始めた。

 自宅に母と息子2人きりの生活。食事は10年前から背中合わせで食べる。母はリビング、息子はテレビのある居間のこたつ。

 この10年間、あらゆる相談機関を回った。保健所、精神神経センター、クリニック、民間の支援機関。どこでも回答は得られなかった。

 「寝ても、覚めてもこの問題が頭から離れない。近所の知人、友人にも話せない」と川田さん。「ずっとトンネルの中。出口が見えないんです」

 ■誤解と偏見

 “ひきこもり”というと、何を思い浮かべるだろうか。新潟の少女監禁事件(昨年1月)や、福岡のバスジャック事件(5月)の報道で、2000年はひきこもり問題への認識がこれまでにない広がりをみせた年だった。

 だが、その認識は「犯罪予備軍」とのレッテル張りだったり、「甘えている」「ぜいたくだ」などの誤解と偏見に満ちている。

 全国に80万人いるといわれるひきこもり。多くの青年が30代、40代に移行している。この広がりと長期化は、親が悪い、子どもが甘えている、といった親子論では片付けられない社会問題だ。

 ひきこもり青年は「社会に出たい」と焦っている。出たいのに出られない。焦りが家庭内暴力を生み、親が何とかしようとすればするほど悪循環に陥る。

 多くの親が出口の見えないやみの中で苦しんでいる。既に親の愛情だけではどうにもならない。埼玉で生まれた「全国引きこもりKHJ親の会」が、社会に積極的に働き掛けるのは、第三者の支援がどうしても必要だからだ。

 ■未来の姿

 昨年11月に大宮市内で行われたKHJ親の会の月例会に、都内から83歳の母親が駆け付けた。48歳の三男が35年間、ひきこもりを続けている。

 「お母さん、もう、休んでいいから。十分親の役目は果たしたから」。皆の前で泣く母親に優しい言葉を掛けながら、奥山さんはりつ然とした思いにとらわれた。「これはまるで我々の未来の姿ではないか」

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 ひきこもり 1000人以上のひきこもり患者を診察してきた精神科医の斎藤環さんは、著書「社会的ひきこもり」(PHP新書)の中で、ひきこもりを「20代後半までに問題化し、6カ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第1原因とは考えにくいもの」と定義している。

(2001年1月16日掲載)

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