子ども虐待 家族間暴力の現場から 第5部(下) 10

改正防止法施行まで1ヵ月
市町村対応にばらつき


 「発足三年目だというのに、年間の運営予算が十万円を切る。昨年まではその半分。情けなくなります」

 ある自治体職員が苦しげに話した。管轄の警察、医師会、教育委員会、保育所、幼稚園、小中学校、学童保育、民生児童・主任児童委員などと児童相談所で構成する「児童虐待防止ネットワークシステム」が発足したのは二○○一年。事務局は自治体の児童福祉担当主管課が務める。

 虐待の通報があると、全関係機関を集め「実務者会議」を開催。通報状況を説明し、介入や援助の方法を検討して、役割分担を決める。継続している事例では、経過の情報交換や連携を集団検討するケースカンファレンスを行う。昨年は計二十四回の実務者会議を開いた。

 隣接する別の自治体は、○四年度予算で虐待など児童相談ホットラインの新設を決め、電話相談員を非常勤職員として配置する人件費も当初予算に計上した。「首長の一声だと聞いています。人口比では三倍近い規模なのに、自分のまちは何と貧困で、子どもの命がないがしろにされているのかと思う」。職員の表情には悔しさがにじんだ。

 県内の市町村児童虐待防止ネットワークは七月一日現在、七十四市町村が設置。一九九九年度以降、全国的に整備が進んだ。だが、予算は乏しく、内実もばらつきがある。事務局を担当する児童福祉担当課の管理職や職員の人事に「専門性」が考慮されないことが多いためだ。消極的だったり未経験の職員が異動してきた場合には、年数回の代表者会議がイベント的に招集される程度。「開店休業」に近い自治体もある。ばらつきの大きな原因は自治体トップの姿勢や人材の差だ。

 関係機関が関与しながら子どもを死なせてしまった場合には、検証のための会議が開かれることもある。しかし、「どうすれば死を防げたか」を専門家を交え詳細に分析し、教訓を明らかにしても、報告が文書化されず、肝心の共有・蓄積に結び付くことはまれだ。当然、虐待防止や予防で欠けている態勢を整備しようとする予算化には進まず、仮に善意の意見具申があっても、多くは財政当局の抵抗で実現しない。

 国会に上程されている児童福祉法改正案は、社会保障審議会児童部会でのこうした議論を踏まえ、既存の市町村ネットの自治体間格差を是正しようと、「要保護児童対策地域協議会」として法定化することを打ち出した。構成員として民間団体が加わることも可能とした。

 構成員間では、地方公務員法や医師法などの守秘義務に縛られず必要な情報交換を行えるが、外部に対しては、罰則付きで守秘義務を課した。

 また、既存ネットワークを継続する場合は「中核機関」を必ず設置し、責任の所在を明確化するように改めた。厚労省は現在、全国の自治体の既存ネットを詳細に調査し、改正法案審議に備えている。

 改正児童虐待防止法は、一部を除き十月一日から施行される。厚労省、警察庁、文部科学省は今月中旬、都道府県・指定都市に改正法運用を通知。発生予防から虐待を受けた子どもの自立支援まで「切れ目のない援助を行うことは地方公共団体の責務」と管内市町村、関係機関への周知徹底をあらためて強く求めた。

 県はことし五月、改正防止法と児童福祉法改正案をセットで検討し、県と市町村の新たな連携や保健分野の役割を明確化する「児童相談のあり方検討委」を発足。近く新たな「対応指針」をまとめる。

 県は「市町村の準備には自治体ごとに差が出るだろう。最終的責任は児童相談所と県が持たねばならない」と語った。

=第5部おわり=

 

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 (2004828日掲載)


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