子ども虐待 家族間暴力の現場から 第4部 1
〜 3年間の英知集めて 〜
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| 約5000人の市民と共に夜の銀座を歩いた第1回「子どもの虐待死を悼み、命をたたえる市民集会・パレード」で、法改正を訴えた児童擁護施設「東京育成園」園長の長谷川重夫さん(車いす)は昨年11月に亡くなった=2002年12月13日撮影(児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク提供) |
現行児童福祉法の特別法である児童虐待防止法が二○○○年五月に議員立法で成立、同年十一月二十日に施行されて三年が経過。同法で規定された見直し・改正の時期を迎えた。
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一枚のフローチャートがある。「児童虐待防止法施行機構図」と名付けられている。機構図は、同法に忠実に防止策を実施する目的で、○一年度県予算を概算要求する資料として、企画財政当局向けに作成された。
作成者は当時、県中央児童相談所長だった今井宏幸氏(62)。現在は県立特別養護老人ホーム「彩華園」園長だ。
既存の県の虐待防止システムに、新法で加わったシステムを条文ごとに書き加えた。児童虐待防止センター、虐待を加えた保護者へのカウンセリングセンター、心的外傷の強い被虐待児の心理療育センターの新設が構想されている。
しかし、土屋前知事時代には、何一つ実現しなかった。
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第三者の目が届きにくい密室の「家族フレーム」の中で、長い間、繰り返されてきた子どもへの最大の人権侵害「虐待」。今この瞬間にも声にならないSOSを出している子どもがいる。
多くの虐待者の言い訳に使われるのが「しつけ」という論理だ。礼儀作法を身に付けさせる、というその発想には“自分にとって都合がいいように動いてくれるようにコントロールしたい”という危険な願望が隠されていることに、彼らは気が付いていない。
私たちは、虐待される子たちに対して、見て見ぬふりをしてきたのではない。
しかし、盲点があった。それは、「いかなる条件下であっても、子どもは本来、絶対的に、安心して安全に、幸せになれるように生きる権利を持つ」という認識だ。
まだある。権利侵害行為を加えてくるのが親や「きょうだい」、親の恋人といった「家族フレーム」の構成員である場合、子どもは決して大きな声で「助けて」とは言えないという事実だ。
そこに、「赤の他人」である行政が、司法による親権喪失宣告の請求や、保護者不同意での親子分離、緊急一時保護など、強力な職務権限発動を含む形で社会的に介入し、子どもの心身の安全を確保・保護する。
時がたち、再び親子が共に安心して安全に暮らせるように家族関係を修復・回復・再生させることもできる。
不幸にも、虐待された子どもが十八歳を超えて、なお家族が再生できない―と判断された場合には、その子ども自身の自立を社会が支援する。
伝統的な家族神話を突き崩すような行政によるこれらの介入を可能とする法的根拠は児童福祉法とされてきた。だが、その守備範囲は、民法上の「子ども=未成年」を下回る十八歳未満に限られる。
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「それでは不十分で、子どもの権利を守りきれない」という声に押され、危機感を抱いた国会議員や専門家、メディア関係者らが知恵と力を集め、虐待定義を初めて明示した現行児童虐待防止法は、二年越しの審議の末に全会一致で可決、成立した。
不十分な内容であることは承知の上での特別立法だった。だからこそ附則に「三年後をめどに見直す」との文言を付けた。
その見直しと改正の舞台となる第百五十九回通常国会召集が目前に迫った(予定は今月十九日)。
相談所長任用に専門性を
子どもの命を最優先
県中央児童相談所長だった今井幸宏氏が作成した「児童虐待防止法施行機構図」には「被虐待児童保護、保護児童指導、保護者指導 三部門統合図」のサブタイトルが付いている。
「法に忠実に行政の責務を果たそうとしたら、こうした形になった。他意はない」と淡々と語る。
今井氏は衆議院青少年問題特別委員会(石田勝之委員長=当時)が、議員立法の可能性を含め、虐待防止法の審議を行っていた一九九九年十一月十八日、現職の児童相談所長として参考人招致された。立場は全国児童相談所所長会会長“代理”だった。
当時の児童福祉法は、児童相談所長資格について(1)精神保健に関して学識経験を有する医師(2)心理学を専攻した者(3)児童福祉司として二年以上勤務した者(4)前各号に準ずる学識経験者−の四つを規定していた。
今井氏は、いわゆる「四号所長」だった。しかしその国会発言は関係者の度肝を抜いた。
九七年度に埼玉県内で発生した虐待による子どもの死亡事例は四件。いずれも事前に児童相談所が関与していながら死亡を防げなかったもので、厚生省(当時)統計によると「全国ワースト1位」。これを受けて、同氏ら県内児童相談所長は、全国でも初めて「虐待の疑い通告を受けた場合には、すべてのケースについて、通告から四十八時間以内に、児童福祉司が子どもの安全を目視確認する」ことを会議決定した。
予算が増えず、バーンアウト(燃え尽き症候群)する児童福祉司が相次ぐ中での決定だった。「埼玉方式」と呼ばれたこのシステムを稼動させれば「児童相談所はパンクしないか」との議員質問には「パンクすると思う」と答弁し、波紋を集めた。
フロー図について今井氏は「たとえ事務職であろうと、座ったイスが職務の内容を規定するのです。きれい事では子どもの命は救えない。職権発動を怠るのは職務怠慢としかいえない。制定法に忠実に描いただけのこと。今回の改正では、子どもの命と人権にかかわる以上、児童相談所長の任用条件をきちんとした専門職にすべきだ」と話している。
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(2004年1月5日掲載)
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