子ども虐待 家族間暴力の現場から 第3部 2
やけどで入院
お父さんがやった
十二月十五日、児童相談所はケイちゃん(6つ)宅への訪問を約束していたが、「体調が悪く、病院へ行きたいので別の日にしてほしい」との連絡が母親から入った。
このため担当の児童福祉司は、母親あてに相談所が子育てについてどんな援助ができるかを手紙に書き、相談所の案内パンフレットも同封して郵送した。
ケイちゃんが足に大やけどを負って入院したのは、その四日後、十二月十九日だ。
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やけどはひどかった。ケイちゃんの小さな足はケロイド状の赤褐色に変色し、顔面や体には打撲痕もあった。原因について医師に聞かれた母親は、最初あいまいな説明に終始した。
子ども虐待の防止にかかわっている専門家たちによると、子どものやけどの一−二割は虐待によるものだという。六歳の子どもが誤って熱湯に足を入れることは、まずあり得ない。
「お父さんがやった」
ケイちゃんが医師に言った。医師が母親に確認すると、内縁の夫が煮えたぎる風呂の湯にケイちゃんの足をつかんで入れたことを認めた。翌日になると、ケイちゃんの両目ははれ上がった。
この間、ケイちゃん宅から児童相談所には何の連絡もなかった。
翌年一月九日、以前からケイちゃんを心配していた隣家の主婦が「ケイちゃんの姿を最近見ないが…」と電話してきた。さらに翌日にはやけどで暮れから入院したようだ−との情報が入ったため、児童相談所は病院のソーシャルワーカーに調査を依頼した。
同日、病院の看護婦から児童相談所に「被虐待児が入院している」との通告が入った。ケイちゃんのことだった。親はほとんど面会に来ないが、来てもケイちゃんをしかってばかりいる。ケイちゃんは親の前では緊張しているが、「家に帰りたい」と言う。自宅に帰すしかないのだろうか−との内容だった。
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児童福祉司たちは病院を訪問し、医師に協力を依頼する一方、所轄警察署との協議も進めた。最悪の場合は傷害容疑で告発してくれれば逮捕できることなどを説明された。
母親と内縁の夫は病院に対して不信感を抱いたようだ。一月二十五日、別の病院にケイちゃんを転院させた。このため医師は、転院先の医師への紹介状にやけどの原因は「虐待である可能性が極めて高い」と記した。
(登場人物は仮名。プライバシー保護のため、ドキュメント部分は一部構成を変えてあります)
■幼児のやけどと虐待 虐待によるやけどの代表的なものは、1=熱い物を押し付けるタイプ、2=熱湯によるもの−の二つに分かれる。
1は致命傷になることは少ない。アイロンのような熱した金属か、たばこの火のように火が付いている物が使われることが多い。この場合、偶然の事故なら熱傷は一カ所で大きさも小さく、ふだん露出している部分の皮膚に一瞬接触することが多い。従って、子どもの年齢によって受傷しやすい場所はほとんど決まっている。
多いのは2のタイプで、風呂につける、熱湯を浴びせられる、強制的に熱湯に沈められる−などがある。この場合、虐待であることを説明するために医師は湯の最高温度を推定しなければならない、とされる。
(1999年9月21日掲載)
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