子ども虐待 家族間暴力の現場から 第三部 19
注目集めた判決
親権の範囲で係争
子どもへの虐待防止に取り組む専門家たちの間で、虐待発見後の通告義務(児童福祉法二五条)の不徹底と並び、現行法の問題点として指摘されているのが「親権の過大性」(民法)だ。この点で関係者の注目を集めた判決が、ことし二月二十二日、大阪地裁第十七民事部で出た。
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虐待を受けた十八歳未満の子どもが施設に入所措置されるのには、1=保護者と子どもが同意した場合(児童福祉法二七条一項三号)、2=保護者または子どもが不同意の場合(同二七条八項)、3=保護者が反対の場合(同二八条)−の三つがある。2や3の場合には家庭裁判所に措置の承認を申し立てたり、都道府県の児童福祉審議会を経て決定される。
これに対して、一時保護(同三三条)は児童相談所の職権で虐待を受けた子どもの心身の安全を確保することができる。
この場合でも保護者の意思を確かめ、同意を求めた上で児童相談所に併設されている一時保護所などに保護するのが原則だが、法的には保護者の意思を確かめる必要はない。
同時に一時保護は行政処分のため、行政不服申し立ての対象となり、保護者には不服申立権が担保されている。
これらを反映して、児童相談所は一時保護することを保護者に伝える必要があるとされている。その際には、一時保護所の所在地を告知書面に記入するのが原則だ。
だが実際には、職権で一時保護しなければ子どもの心身の安全が確保できないような場面では、保護者も興奮していることが多く、一時保護所から子どもを取り戻そうとするような気配を見せるという。特に、性的虐待を子どもに加えている保護者の場合には、この傾向が強いとされる。
一般的に、一時保護所は福祉施設に比べ閉鎖的な構造となっていることが多く、しかも公共施設であるため、虐待を加えている保護者が子どもを取り戻す危険性はそれほど多くはないという。ただし、小規模な一時保護所の場合には宿直態勢も弱く、関係者は極端な緊張にさらされるという。
このため一時保護している被虐待児を保護者が取り戻す危険性が強い場合には、1=措置を決めた児童相談所の所在地以外にある一時保護所、2=遠方にある福祉施設−に委託して子どもをかくまった上で、保護者への告知項目から一時保護所の所在地を省略する扱いもあり得る。
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関係者から注目されたのは、ことし二月に大阪地裁第十七民事部が出した判決が、「一定の場合には子どもの所在場所を告知しないことも許されるべきだ」とした点だ。
《「一時保護」は児童を緊急に保護する必要性の観点から、親権者の監護教育権を合理的限度で制限するものである。一時保護の原因となった事情や、子どもの意向などから、児童の福祉のために所在場所を知らせることが不適当と判断される場合には、親権者に対して児童養護施設に一時保護していることを告知するだけで、具体的所在場所を告知しないことも許容されるべきだ。それが適正手続きや児童福祉法の精神に反するとはいえない》
このケースの保護者は、大阪府の児童相談所が保護者に知らせずに職権で子どもを一時保護したのは「親権侵害に当たる」として、まず行政訴訟(不服申し立て)を起こしたが、大阪府側が勝訴した。
このため保護者側は民事訴訟に切り替え、「居場所を伝えずに行った一時保護は適正手続き違反であり、親権侵害に当たる」と主張していた。
保護者側は上告。現在、最高裁で係争中となっている。
■一時保護所 埼玉県内の児童相談所は中央(上尾市)、浦和、川越、所沢、熊谷、越谷の六カ所あるが、一時保護所が併設されているのはわずか二カ所だけ。しかも就学前の乳幼児から十八歳未満の子どもすべてが対象となるため、狭かったり、年齢幅が開きすぎたりして安心できないことも多く、実際には乳児院や児童養護施設などに保護委託しなければならない。「保護所はいつも満杯に近い」との声がどの現場からも聞こえてくる。
(1999年10月19日掲載)
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